「緑陰」
2017年8月号掲載 水彩31×41
鎌倉駅から大巧寺、本覚寺と巡り、滑川を渡って妙本寺にたどり着いた。
途中は真夏のように暑かったが、ここは大木の森に囲まれていて陽の光も柔らかい。見上げると、空は小さく細切れになっている。参詣の人や写真機を抱えた人たちとすれ違った。仄暗い森の中にポツンと佇んでいると、何かの気配のようなものを感じた。
スケッチの支度をしていると風が涼し気に森を吹き抜けていった。その風が梢を揺らした。感じていた気配は、木々たちのひそかな息遣いなのかもしれないと思った。